Flying Scotsman

府中、小金井、三鷹

立川大山団地を変えたひと

今日は三鷹の市民協働センターで開催されたトークイベント「ワクワクしなきゃ、始まらない」で、立川にある大山団地の自治会長を務めた佐藤良子さん、三鷹でスクール・コミュニティ・サポートネット代表の四柳千夏子さんの話を聞く機会がありました。左から司会の米川氏、佐藤さん、四柳さん。

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大山団地の佐藤さんは以前からコミュニティビジネス界隈ではよく話題にあがっていた方で、いつかお会いしていたいと思っていたところだったのでイベントの紹介を受けてすぐに申し込み。

 

「団地の自治会長」と聞いていたので元気がない自治会の加入率を上げたり、面白いイベントを団地内でやったりしているのかなあ、程度の先入観でいたのですが、話を聞いてみるとその前段階からしてまずすごかった。佐藤さんの自治会への関わりは旦那さんの代わりに会計監査をやったところ、領収書偽造などの公金横領に多数気付いたところから。そこから不正を許さない立場を示し、総会を延期してまで不正役員を追い出し、新しい役員を改選し、さあきちんとやっていこうと進みだしたのは良かった。だがそこから「旧勢力」からの数々の強迫や嫌がらせ。自転車の破壊、ポストへのいたずら、無言脅迫電話、などなど。「女のくせに生意気だ」なども当然あったようで、家族も含めて身の危険を感じるほどだったそうです。

 

佐藤さんはそれでもご自身の正義や信念を貫き、また実際には協力や応援してくれる方も多かったのでしょう、自治会の立て直しをするのみならず、孤独死対策、高齢者見守りや趣味サークルを中心にした組織化、子育て世代のサポート、防災対策など、いままちづくりで課題になっているほとんど全てを4000人の団地内で解決する仕組みを作り上げてしまったのです。面白かったのが「自治会葬」。業者に頼むと高くつく、ならば自分達でやってしまおうとこれもシステムを作ってしまった。わずか32,000円で葬儀一式が済んでしまう。今や「予約したい」とまで連絡が入るそうな。まだ死んでないのに。

 

まだまだ沢山の話題があったのだけど、大山自治会が上手く運営できているのは「自治会加入のメリット」をきちんと確立していることと、新加入者に会長から手紙を出したり歓迎会を開いたりする受け入れ体制がきちんとしているからなのかなと。佐藤さんは今春に会長を次世代に譲ったようですが、自治会役員側がしっかり住民へ「営業」をしているのが大きいと思います。

 

こんな感じで書くと佐藤さんには取っ付きにくい印象を持つかもしれませんがとんでもない。たまたま今日は佐藤さんの隣の席に座ることになったのですが、休憩中に、立川バスへ自治会から申入れし、深夜早朝バスの運行を実現させた話を聞いていたら「あなた、これ差し上げるわよ」ひょいとペンケースをいただきました。実はこれ、自治会の収入源として廃棄される着物を加工して(もちろん団地住人がミシンで縫ったりして)立川市内などで売っているそうです。他にも駐車場管理を受託したり、工夫と気付きを元にコミュニティビジネス化を団地内で推進しているとのこと。

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確かに今日は「団地の自治会長」だった佐藤さんのお話でしたが、ここまでの実績を作り上げるには、並々ならぬ正義や信義を貫き通す意志の強さを持っていたからこそだったのかなと強く感じ、自治会の話よりもむしろ佐藤さんの生き様に魅力を感じました。「意志の人」や「信義の人」なんて小説の中でのフレーズでしかなかったのですが、今日はそれそのものを目の前にした気がします。佐藤さんの生き様は誰でも真似できるものではないのだろうけど、自分にとっては「こんな素敵な人になりたい」と思える人と出会えました。